アスタキサンチンとは、別名「海のカロテノイド」ともいわれる赤色の天然色素で、脂溶性の成分です。カロテノイドとは、天然に存在する色素のことで、ヒトの体内で合成することはできません。種類はとても多く、600種類以上が知られています。色は赤や黄色、オレンジ色などがあります。カロテノイドには、アスタキサンチンのほか、リコピンやルテイン、β-カロテン、ゼアキサンチンなどがありますが、数あるカロテノイドの中でもアスタキサンチンは抗酸化力が非常に強いことで知られています。
抗酸化力とは、紫外線やストレスなどによって発生する活性酸素を除去する力のことです。アスタキサンチンが持つ抗酸化力は、ビタミンEの約1000倍にもなるといわれています。

●アスタキサンチンの体内蓄積
アスタキサンチンは、脂溶性の成分のため、ビタミンAやビタミンDなどのように体内蓄積が心配されますが、摂取後約8時間で血中濃度が最大となり、約72時間後あたりから消失することがわかっています。継続的に摂取した場合でも、摂取前後で血中濃度に大きな差が見られなかったため、体内蓄積は起こらないという安全性が確認されています。

●赤色の生物に含まれるアスタキサンチン
アスタキサンチンは自然界に広く分布しており、サケやイクラ、カニ、エビ、マダイなどに多く含まれています。カニやエビに含まれているアスタキサンチンは、生きているときはたんぱく質と結合しているため、くすんだ色をしていますが、加熱することでたんぱく質とアスタキサンチンが分離し、本来の鮮やかな赤色に変わることが特徴です。マグロなどの赤身の魚はアスタキサンチンと思われがちですが、加熱しても赤くならないため、アスタキサンチンではないことがわかります。

●アスタキサンチンの発見
アスタキサンチンとは、1938年、ノーベル化学賞を受賞したオーストリアの生化学者、リヒャルト・クーンらによってロブスターから発見されました。アスタキサンチンの「アスタ」はロブスターの属名Astacusにちなんで命名されました。

 

サケの川のぼりの秘密???
サケはもともと白身魚ですが、プランクトンから摂取したアスタキサンチンを体内に蓄えることで、長い回遊の旅に耐えることができ、激流の川をさかのぼることができます。サケの回遊は、ストレスや厳しい環境の戦いであり、アスタキサンチンは体内に大量に発生した活性酸素から身を守る役割を果たします。体内に蓄えられたアスタキサンチンが活性酸素を除去することで、疲労を回復させるのです。このアスタキサンチンは卵であるイクラにも受け継がれます。イクラが孵化するまでの間、紫外線などから卵を守る役割をしてくれるのです。

サケの養殖にはアスタキサンチンが欠かせない???
サケは食物連鎖の中で食物を通じてアスタキサンチンを摂取し、筋肉に蓄積させていますが、養殖のサケは意図的にアスタキサンチン含有のエサを与えています。サケの流通業者はその赤みにランクを付け、適度な赤みを持つサケは高値がつきます。アスタキサンチンの添加量をコントロールすることで、消費者好みのサケを生産しています。

キンギョやニシキゴイの色揚げにはゼアキサンチンが必要???
キンギョやニシキゴイの鮮やかな赤はアスタキサンチンの色ですが、これらコイ科魚類はアスタキサンチンを摂取していません。実はゼアキサンチンというカロテノイド系色素を摂取し、体内でアスタキサンチンに代謝変換することで鮮やかな赤を発色しているのです。